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AIエージェントの作り方入門|本番運用者が教える最小構成と設計の3原則

AIエージェントの作り方入門|本番運用者が教える最小構成と設計の3原則
しんたろーしんたろー
10分で読めます
この記事の内容(目次)

AIエージェントとは、目標を渡すと「観察→判断→行動」のループを自分で回して仕事を進めるAIのことだ。チャットAIとの違いは「答える」で終わらず「実行する」ところにある。

僕は1人で開発しているSaaS「ThreadPost」の裏側で、複数のAIエージェントを毎日本番稼働させている。月300本の記事を自動生成するパイプライン、6体のAIが分担するコードレビュー、SNS運用の自動化——どれも人間が寝ている間に動く。この記事では、その実運用の経験から「AIエージェントの作り方」を、概念→最小構成の設計→本番で死なないための原則の順で解説する。

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AIエージェントとは何か:チャットAI・自動化ツールとの違い

まず言葉の整理から。似た概念と混同すると、作るものを間違える。

チャットAI従来の自動化(RPA等)AIエージェント
入力質問決められたトリガー目標(ゴール)
動き1回答えて終わり決められた手順を実行状況を見て手順を自分で決める
想定外への対応人間が対応止まる・壊れる自分でリカバリを試みる
「このエラーの意味は?」毎朝9時にレポート送信「このバグを直して」→調査から修正まで

エージェントの本体は、実は次のシンプルなループだ。

繰り返し {
  1. 観察: いまの状況と、使える道具(ツール)の一覧をAIに渡す
  2. 判断: AIが「次にどの道具をどう使うか」を決める
  3. 行動: その道具(関数)を実行し、結果をAIに返す
} 目標達成 or 停止条件 まで

ファイルを読む、コマンドを実行する、APIを叩く——「道具」を差し替えれば、このループはコーディングにも、リサーチにも、業務処理にもなる。作り方を学ぶとは、このループの設計を学ぶことだ。

作り方は3レベルある:全部自作する必要はない

「AIエージェントを作る」には段階があり、目的によって入るべきレベルが違う。

レベルやること向いている人コード量
L1: 既製エージェントを使い倒すClaude Code等に仕事を委任する全員(まずここから)ゼロ
L2: 既製の頭脳に自作の手足を付けるLLM APIに自分のツール(関数)を繋ぐ自分の業務を自動化したい開発者少〜中
L3: ループ自体を自作・多体構成複数エージェントの分担・自律ループ設計プロダクトに組み込みたい人中〜大

よくある失敗は、L1を飛ばしてL3から入ること。既製エージェントを使い込んだ経験がないと、「エージェントがどこで詰まるか」の勘所がないまま設計することになる。最高の教材は、完成品のエージェントに仕事を任せてみることだ。まだならClaude Codeの使い方完全ガイドから始めてほしい。L1だけでも、大半の個人の自動化ニーズは満たせてしまう。

あわせて読みたい【2026年版】AI活用1人SaaS開発の完全ロードマップ|5ステップで始める個人開発 →

最小構成のエージェントを設計する(L2の骨格)

L2に進む人向けに、最小エージェントの設計図を示す。必要な部品は4つだけだ。

  1. 頭脳 — LLMのAPI。ツール呼び出し(Function Calling)に対応したモデルを使う
  2. 道具(ツール) — あなたが書く関数。「メールを検索する」「DBに書き込む」「スクレイピングする」等。エージェントの能力はツールの品質で決まる
  3. 記憶 — いま何をやっていて、何が終わったかの状態。最初は会話履歴で足りる
  4. 停止条件 — 目標達成の判定と、上限(最大ループ回数・最大コスト)。これを最初に作る

擬似コードにするとこうなる。

ツール一覧 = [検索する(), 読む(), 書き込む(), 完了を報告する()]
履歴 = [目標の説明]

繰り返し (最大20回まで) {
  応答 = LLM(履歴, ツール一覧)
  if (応答 == 完了報告) 終了
  結果 = 応答が指定したツールを実行()
  履歴に (応答, 結果) を追加
}

拍子抜けするほど単純だが、本番で動いているエージェントも本質はこれだ。難しさはループの実装ではなく、ツールの切り方(粒度が粗いとAIが制御できず、細かいと遅くなる)と、プロンプトで渡す状況説明の設計に宿る。この設計論の深掘りは自律型エージェント実装手法13選に書いた。

しんたろーしんたろー:
初めてエージェントを組む人に一番伝えたいのは「賢くしようとするな、制御しやすくしろ」だ。僕も最初は「何でもできる万能エージェント」を目指して、何もちゃんとできないものを作った。今動いているのは全部、仕事を狭く定義した専門エージェントだ。記事を書くやつ、レビューするやつ、タグを付けるやつ。人間の組織と同じで、役割が明確なほど安定する。

実例:僕が本番で動かしているエージェントたち

抽象論だけでは伝わらないので、実際に毎日動いている構成を晒す。

  • 記事生成パイプライン(7系統) — ニュース収集→分析→執筆→レビュー→画像生成→公開までを毎日自動で回し、月280〜330本を生産。1本あたりのAIコストは約29円まで最適化した
  • 自動コードレビュー(6体構成) — 観点別(バグ・セキュリティ・設計など)に分担した6つのエージェントがPRをレビューする。構成はこの記事で公開している
  • SNS運用の自動化 — 投稿候補の生成から効果測定までの一連。人間(僕)は最終判断だけ

共通しているのは、どれも「人間がやっていた定型業務を、そのままエージェントの職務記述書に翻訳した」ものだということ。ゼロから仕事を発明したエージェントは一つもない。作り方に迷ったら、自分が毎週繰り返している作業を1つ選んで、その手順書を書くところから始めるのが確実だ。

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本番で死なないための3原則

動くエージェントと、本番で運用できるエージェントの間には壁がある。僕が授業料を払って学んだ3原則を置いておく。

原則1: コストと回数の上限を最初に作る

エージェントは失敗するとリトライし続けて課金し続ける。僕はマルチエージェント構成の検証で、1回の実行に25ドル溶かしたことがある(実録はこちら)。最大ループ回数、1実行の最大コスト、日次の支出上限。この3つの上限は機能より先に実装するべきだ。

原則2: 「戻せない操作」に承認ゲートを置く

削除、送信、公開、本番DBへの書き込み——失敗が巻き戻せない操作は、エージェントに完遂させず人間の承認を挟む。逆に、戻せる操作は全部任せる。この線引きの設計論は完全自動化が途中で止まる理由で詳しく書いた。ちなみに僕はこれを怠って、エージェントが勝手に外部との面談を承諾する事故を起こしたことがある。笑い話で済んだが、済まない事故もありうる。

原則3: セキュリティは「ツールに何を渡すか」で決まる

エージェントの事故の大半は、AIの暴走ではなく渡した道具と権限の設計ミスで起きる。認証情報の扱い、実行できるコマンドの制限、外部入力(プロンプトインジェクション)への防御。チェックリストはAIエージェントのセキュリティ対策10選にまとめた。

しんたろーしんたろー:
3原則に共通する思想は「AIを信頼するな、ではなく、信頼できる範囲を設計しろ」だ。人間の新人にいきなり本番DBの削除権限を渡さないのと同じで、エージェントにも権限は段階的に渡す。逆に言えば、上限とゲートと計測さえあれば、エージェントは安心して眠れる程度には任せられる。僕のSaaSが1人で回っているのは、僕が優秀だからではなく、この設計を先に作ったからだ。

学習ロードマップ:今日から3ヶ月の進み方

最後に、順路を示して終わる。

  1. 今日〜1週間: L1Claude Codeに実務を任せ、エージェントの挙動を体で覚える
  2. 1ヶ月目: L1.5 — スキルや自動化設定で「自分専用の定型作業」を登録し、委任の型を作る
  3. 2ヶ月目: L2 — LLM APIに自作ツールを2〜3個繋いだ最小エージェントを作る。題材は自分の定型業務から
  4. 3ヶ月目: L3の入口 — 上限・承認・計測を実装して、1つを無人運用に昇格させる

段階別の詳細はAIエージェント開発ロードマップ6段階にもまとめてある。

あわせて読みたい【2026年版】VRAM 8GBで動かすローカルLLM構築術10選|1人SaaS開発者の実践記録 →

よくある質問

プログラミングができなくても作れますか?

レベルによります。L1(既製エージェントの活用)はコード不要で、Claude Codeに日本語で指示するだけです。実はこれだけで「AIに仕事を任せる」体験の大半は手に入ります。L2以降は簡単なコードを書きますが、皮肉なことに、そのコード自体をClaude Codeに書かせることができます。「エージェントを作るエージェント」という構図が2026年の標準的な入口です。

作るのにいくらかかりますか?

開発中の試行錯誤は月数百〜数千円程度から始められます(小さいモデル・少ないループなら1実行数円)。膨らむのは無人運用を始めてからで、上限設定と計測をサボると一気に跳ねます。僕は1回の実行で25ドル溶かした失敗を経て、全処理のコストログを整備しました。金額そのものより「上限と計測を先に作る」ことが、費用の質問への本当の答えです。

何から作るのがおすすめですか?

「自分が毎週繰り返している、手順を説明できる作業」です。手順を人に説明できる仕事はエージェントに翻訳できます。逆に、ひらめきや責任判断が本体の仕事は今のAIには向きません。僕の月300本の記事生成も、元は自分が手でやっていた「ニュースを読み、分析し、書き、見直す」という手順の翻訳です。発明ではなく翻訳から始めてください。

暴走したり、勝手なことをしたりしませんか?

設計次第です。上限(回数・コスト)、承認ゲート(戻せない操作は人間が確認)、権限の制限(渡すツールを絞る)の3点があれば、実害のある暴走はほぼ防げます。逆にこの3点なしの無人運用は、いつか必ず事故ります。僕自身、承認ゲートの漏れでエージェントが外部との約束を勝手に承諾した事故を経験しており、以来「戻せない操作」の洗い出しを設計の最初に置いています。

フレームワーク(LangChain等)は使うべきですか?

最初は不要派です。エージェントの本体は20行で書けるループであり、最初からフレームワークを被せると「どこで何が起きているか」が見えないまま進むことになります。まず素のAPIでループを1回自作して仕組みを理解し、規模が出てきたら(並列化・永続化・リトライ管理が辛くなったら)道具の導入を検討する、という順番を勧めます。

複数のエージェントを連携させるには?

「分担」から入るのが安全です。1つの大きな仕事を、役割の違う専門エージェント(調査係・執筆係・検証係など)に分け、順番に渡す。僕の6体構成のコードレビューも、観点別の分担が本体で、複雑な相互通信はしていません。いきなり自由に会話させる構成は、デバッグ不能の沼になりがちです。分担→直列→並列の順で複雑さを上げてください。

まとめ:ループは単純、勝負は設計

AIエージェントの作り方をまとめる。

  1. 本体は「観察→判断→行動」の単純なループ。恐れる複雑さはない
  2. まず既製エージェント(Claude Code)を使い倒す。それが最高の教材
  3. 自作は「自分の定型業務の翻訳」から。賢さより制御しやすさ
  4. 上限・承認ゲート・セキュリティを機能より先に作る

エージェントは「未来の技術」ではなく、僕のような個人が今夜から本番で使っている現在の道具だ。作り始めるのに必要なものは、もう全部揃っている。

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しんたろー

ThreadPost開発者・個人開発エンジニア

AI × SaaS個人開発者。Cursor / Claude Code を使った効率的開発、SNS自動化について実体験から発信。

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